義父

母は、俺が小学低学年のときに、
再婚した。

俺に初めて、
父と呼べる人が、できた。

初めのうち俺は、彼に甘えた。
ベタベタと、甘えた。

けれど、俺が8歳のときに弟ができて、
義父との関係は、微妙になった。

義父の、機嫌が悪くなった。

俺にではなく、
母を、罵るようになった。

その機嫌の悪さが頂点に達して、
大喧嘩になった。

家の中が険悪なムードに包まれた。

そうして俺は、祖父母に引き取られた。

それ以来、俺は大学生になるまで、
母の実家で育った。

義父は、気難しい人だった。
別々に住むようになっても、
俺との関係はギクシャクしたままだった。

その義父が亡くなって、もう15年になる。

亡くなって少しして、俺は母に呼ばれた。
義父が残した俺名義の貯金通帳を、渡された。

額はわずかであったけれど、
俺の名義で義父が作ってくれた貯金通帳を、
俺は握りしめて、少しだけ涙した。

少しだけだ、ほんの少し。

俺の中では、
まだギクシャクは、続いている。

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