猛勉強

中学生になると俺は、よく映画を観に行った。
行くときはいつも、一人だった。

「ソイレントグリーン」という映画を観た、
次の月曜日のことだ。理科の授業中、
女教師が生徒に向かって質問したんだ。

「この中で、ソイレントグリーンを観た人いる?」
俺は手を挙げた。手を挙げたのは俺一人だった。

映画「ソイレントグリーン」は、
人口爆発した近未来を暗く陰鬱に描いた映画だ。

中学生の俺がそんな映画を一人で観に行った、
そんなことが今では信じられないくらいだけれど、
俺自身が、中学生時代は暗く陰鬱であったんだ。

中学生の頃の記憶が、乏しい。

楽しい思い出はないし、
悶々として過ごしていたのだ、きっと。

思春期の多感と、家族の中で孤立感を深めている自分を、
どう扱ったらいいのか、自分でさえわからなかった。

自閉気味の性質は、この頃形成されたのだろう。

でも、誰かを恨んだりしてはいない。

俺にはそうするしかなかったんだし、
俺より苦しんだ人だっていっぱいるはずなんだ。

むしろ俺は、思いやりと優しさに包まれて、
少年時代を過ごしたんだと思っている。

実父のいない俺、義父とうまくいかない俺に、
家族は最大限の配慮をしてくれたんだ。

中学生の終わりころ、あの女教師に言われた。
「あなたの家、お金持ち?」

聞かれたんじゃない、
言外に否定の気持ちがこもってた。

「今の成績じゃ、県立高校無理だよ」って。

その気持ちが伝わったからこそ、奮起したんだ。

必死に勉強した。
毎日毎日、問題練習をして、
なんとか入試問題を解けるレベルまで、
自分自身を引き上げた。

今思うと、この頃が一番、
勉強した時期なんじゃないかと思うくらいだ。

そして、県立高校に行くことができた。

あの女教師のおかげと、
今じゃ感謝している。

日の出 空 ビーチ.jpg

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